新居浜・西条のおでかけスポットご紹介
別子銅山ゆかりの産業遺産「旧端出場水力発電所」の整備工事が終了し、2023年3月28日より一般公開となりました。
マイントピア別子の対岸にある「旧端出場水力発電所」。
1912年(明治45年)に竣工し、別子銅山の近代化に大きな役割を果たした新居浜市が誇る産業遺産の一つです。
2018年から進めていた耐震補強工事や周辺整備が完了し、2023年3月28日(火)より、一般公開となりました。マイントピア別子から、徒歩で行けるように周遊道も整備されているので、この春休みやGWなどに訪れてみてはいかがでしょうか。桜や新緑の季節は気温も歩きやすく、おすすめです!
旧端出場水力発電所は、その名が示す通り「水力発電所」です。
1912年(明治45年)から、1970年(昭和45年)までの約59年間運用され、別子銅山の近代化に大きく貢献しました。操業開始時の出力は3,000kWと当時の日本国内では最大級の設計であり、1923年(大正12年)には、さらに設備を増強して最大4,500kWの出力で、銅山事業の発展を支えたそうです。
2010年(平成22年)に住友共同電力株式会社から新居浜市へ寄贈され、翌2011年には国の登録有形文化財になりました。
イギリス積みの赤レンガ造りで愛媛県内でも代表的な西洋建築の一つです。マイントピア別子本館のモデルにもなっているそうです。
今から100年以上前に建てられたものでありながら、レンガの壁には傷やヒビなどがほとんどないそうで、当時建設や運用に関わった方々がとてもていねいに仕事をされたのだろうことがうかがえます。
国領川を挟んで、マイントピア別子から眺める旧端出場水力発電所全景
さて、そんな旧端出場水力発電所ですが、実は2018年から大規模な補修工事に入っていました。その工事が完了となり、2023年(令和5年)3月28日より、晴れて一般公開となっています!
工事前にも一般公開はされていたのですが、以前は案内板などもほとんどなく、ただの水力発電所の内側が見学できるだけというものでした。
しかし、今回の工事は周辺整備も含めた一大プロジェクトとなっており、老若男女・国内外の方を問わず、この貴重な産業遺産を広く楽しんでもらえるよう案内板の設置や多国籍言語での解説文をネット経由で閲覧できるようにするなど、さまざまな改修改良が行われています。
ぜひ、この機会に “Rebornした” 旧端出場水力発電所をお楽しみください!
マイントピア別子から旧端出場水力発電所へは、上流の「足谷(あしたに)橋」経由で向かいます。まずは、足谷橋へ向かいましょう。
※2018年(平成30年)冬以前までの徒歩ルートとは変更になっています、ご注意ください。
※県道47号線(新居浜別子山線沿い)は、歩道がないため大変危険です。必ず、足谷橋ルートで向かってください。なお、2018年冬以前にあった県道47号線からのルートは、2023年3月現在「閉鎖」となっています。
マイントピア別子の無料駐車場です。ここから国領川の上流に沿って進みます。
マイントピア別子の「芝生広場オープンスペース」を右手に見ながら、まだまだ上流へ向かいます。
こちらが国領川に架かる「足谷橋」です、この橋を渡ってください。
足谷橋
足谷橋を渡った先には、案内板が出ています。案内に沿って進んでください。
今回の整備事業で新設された階段があります、ここから発電所へ降りていきます。
旧端出場水力発電所前に到着です、お疲れさまでした!
少し歩きますが、今の季節は咲き始めた桜や緑が鮮やかになってきた山々を眺めることもでき、散歩コースとしてもちょうどいい感じです。
ここからは、まいぷれ新居浜編集部が実際に現地で取材した一般公開初日の様子を写真とともにお届けします。
旧端出場水力発電所の入り口です。大きな欠円アーチ窓が特徴的です。
国の有形登録文化財を示すレリーフ
市長挨拶と発電所の成り立ちについて
電気学会から贈られた「でんきの礎」クリスタル
昔の看板
一般公開を記念して、関係各所からお祝いのお花が届いていました。
新居浜市に寄贈される前に発電所の運営管理をしていた住友共同電力からのお花(写真一番上)もありました。
内部には、実際に使用されていた発電機などが数多く展示されています。
旧端出場水力発電所で使用していたドイツのシーメンス・シュッケルト社の発電機(1910年製)や、同じくドイツのフォイト社が製作したベルトン式水車を観賞できます。これらは大変完成度が高く、発電所としての稼働が始まった1912年からその幕を閉じる1970年まで、ずっと使用されたそうです。
こちらは水圧鉄管です。
水力発電では、高い場所に貯めた水を低い場所へ落としたときの力(位置エネルギー)で水車を回すことにより、発電機が回って電気が作られています。
水圧鉄管は高い場所から低い場所へと水を水車まで運ぶ部分です。旧端出場水力発電所は、その落差が約600メートルもあり、当時の国内最高値でした。この水圧鉄管は、それだけの水圧に耐えられるよう設計されたものです。
ここで少し余談です。
旧端出場水力発電所は、電気学会から「でんきの礎」の一つとして顕彰(功績を称え表彰すること)され、それを記念したクリスタルを授与されています。
でんきの礎は、社会の発展に貢献し歴史的に記念されるべき物事や人々に贈られます。旧端出場水力発電所は国内随一の発電量で銅山事業を支えた功績と、もう一つ、電気学会から注目されたポイントがあり、それが「海底ケーブル」です。
【参考写真】実際の海底ケーブル(※住友共同電力株式会社所蔵、発電所には展示はありません)
別子銅山から産出された銅は、新居浜市の沖合約18kmの距離にある四阪島で精錬されていました。
当初は島内の火力発電所から電力を供給していましたが、石炭の輸送費が事業を圧迫しており、この旧端出場水力発電所からの送電が検討されます。
海底ケーブルの研究を始めた1910年代(大正初期)当時、世界最長のケーブルは米国サンフランシスコにあった約6.6kmのものでしたが、別子銅山と四阪島を結ぶにはそれを遥かに超える20km超の海底ケーブルが必要であり、それを成し遂げる技術はまだ世界のどこにもありませんでした。
当時の技術者たちは実際にアメリカへも赴いて海底ケーブルの研究をしたそうです。その成果もあり、1920年には成功の可能性を掴み取り、1921年から工事を開始。翌1922年(大正11年)に、当時世界最長となる約20kmの海底ケーブル敷設に成功します。
海底ケーブル自体の技術はすでにあったものとは言え、これほどの距離を送電できるケーブル敷設を成功させたのは偉業であり、その後の日本の海底ケーブル技術発展に大きな貢献を果たしました。まさに、でんきの礎に相応しい場所です。
操業当時の貴重な機械・器具も惜しみなく公開されています。
日本の近代化を支え続けてきた経年による風格をぜひ現地で感じていただきたいです。
公開初日は13時から一般入場が始まり、たくさんの人たちが見学に訪れていました。
夫「ずいぶん前に来た時は案内板もなく殺風景でしたが、今回すごく分かりやすい案内板がたくさんあって、おもしろく見学できました」
妻「マイントピア別子にお花見へ来たので一緒に立ち寄りました。別子銅山の歴史も知ることができて勉強になりました」
「我が街、新居浜の宝が復活したと聞いて、居ても立ってもいられなくて一般公開初日に来ました。先人の作ったこの産業遺産があってこその、今の新居浜があるんです。感動しました」
地元メディアを中心にマスコミからの注目も高く、まいぷれ以外の取材班の姿も。
新居浜市は、日本の発展・近代化に多大な貢献をした別子銅山を有することから産業遺産が数多く遺されています。
国内では同じく産業遺産である「石見銀山跡」や「富岡製糸場」等が世界遺産に認定されるなど、先人たちが今日の日本や世界の発展のために築いてきたものを後世に伝わる形で保全する動きが進んでいます。今回の旧端出場水力発電所周辺の整備もそれに続くものになるのではないかと感じました。
現在では操業を停止した発電所ですが、水力発電の仕組み自体は近年SDGsなどへの取り組みから注目が集まる自然エネルギーの一つと言えます。展示室にはわかりやすい解説ボードなどもあり、日本近代化までの歴史やエネルギー問題についても考えられる学びの場としても良い場所になっていると思いました。
春休みや夏休みなどにお子さんの自由研究テーマを探しに行ってみるのもいいかもしれません。
施設名
旧端出場水力発電所
入館料
無料
開館時間
9:00~17:00
※冬季(12月~春休み中)は、10:00~17:00になります。
休館日
2月第3週の月曜日から5日間
住所
※マイントピア別子の対岸にあります。
駐車場
マイントピア別子内に駐車場あり
※旧端出場水力発電所には駐車場はないため、マイントピア別子をご利用ください。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。