伊予市パーフェクトガイド
ようおいでたなもし、伊予市パーフェクトガイドの世界へ~♪~♪~♪
第150回目は、伊予市にある「こたろう博物館」の館長であるいせきこたろうさんの『伊予市、ナニミル?ナニヲシル?』シリーズ第20回目です♪
今回で「神社に詣でる」シリーズは4回目。今まで、神社の参道や境内で目にすることができるものを、石造物を中心に、どちらかというと「美術的鑑賞」に近い形で眺めてきた。
今回は少し切り口を変え、無形のものにフォーカスを当ててみたいと思う。
伊予市内に数多ある神社の中から、伊予市上吾川に鎮座する伊予岡八幡宮を取り上げることにする。
この神社の鎮座地を他人に紹介しようとする場合、常套手段として使うのは「「地名」だろう。先ほど記した通り、この神社の鎮座地は伊予市上吾川だ。
伊予市民であれば、これを難なく「かみあがわ」と読むのであろうが、市外の方だと、「上」が「うえ」か「かみ」かわからないし、「吾川」を「ごかわ」、「わがかわ」と呼び間違いかねない。これはきっと、難読地名の部類に入るんじゃなかと思ったりしている。
愛媛県の歴史に詳しい方ならば、古代~中世のころの伊予国に置かれていた荘園の内、伊予郡に置かれていたものとして「吾川荘」「吾河保」をご存じかもしれない。ちなみに、この荘園、石清水八幡宮護国寺が領主だったようである。
一口に「上吾川」というが、これはどのような集合体に属する地名か。その答えは「大字(おおあざ)」だ。私が小学生のころには、社会の時間に大字・小字の話を習ったと記憶しているのだが、最近の若者と会話の中で、「大字……。初めて聞きましたね」などという言葉が飛び出したことには驚いてしまった。確かに都会に住んでいたりすると、大字・小字の概念など崩壊してしまっているし、教える機会も失せてしまってるのかもしれないなぁと考えさせられた。
大字とは何か。大雑把にいえば、「明治~昭和にかけての市町村合併以前の旧村名」といったところになろうか。
今の伊予市は、平成17(2005)年4月に伊予市・中山町・双海町の3市町が合併して成立したもの。そして旧伊予市は、昭和30(1955)年1月に、郡中町・北山崎村・南伊豫村・南山崎村が合併したものである。
更に遡る。昭和15(1940)年1月に伊予郡郡中町と合併して消滅した郡中村、これは明治22(1889)年12月に、上吾川村、下吾川村、米湊村が合併して成立したものだ。ようやく出てきた。この「上吾川」、これが現在に至るまで引き継がれ続けているのだ。
「吾川」という名前一つとっても語るべきことは実に多い。さすが、荘園成立の時代から連綿と呼ばれ続けている地名だけのことはある。歴史的な重みは蔑ろにできない。
さて余談が過ぎたが、単に鎮座地の説明だけならば、こんな小難しいことを語る必要もなく、カーナビやらGoogleマップやらに委ねればよい。「伊予市上吾川495」、「上吾川508」といった住所情報を検索窓に入力すれば、具体的な位置は容易に特定できる。ただし、これらは万能ではない。山間部や路地の片隅にひっそりと佇むお宮なんかは番地表記ができない。しかし、心配は御無用。「33.7545 132.7108」といった緯経度データを示せば、相手に場所を正確に伝えることができる。いやはや、何とも便利な世の中になったもんだ。
しかし、それじゃあまりにも味気も素っ気もないと思ってしまうのは、私だけだろうか。やっぱり、曖昧な情報しか持ち合わせない方が、旅の味わいは深まるんじゃないかと思うのである。例えば、「郡中小学校の南西よ!」とか「JR伊予市駅から東南東に直線距離でだいたい820mのところやね」という情報しか得られなければ、真剣に地図を眺めるだろう。恐る恐る目的地へと訪ね歩けば、多少道に迷うかもしれないけれど新たな物事の発見に出くわすかもしれない。
伊予岡八幡神社社叢遠景
次は神社の歴史に目を向けることにしよう。
伊予岡八幡神社の創建は、平安前期の貞観元年(859)と伝えられる。この年の8月、南都七大寺の一つである大安寺(奈良県奈良市)の僧侶・行教律師が、八幡大神の託宣を受け、大安寺の鎮守として豊前国の宇佐神宮(大分県宇佐市)を山城国の石清水八幡宮へと勧請するため瀬戸内海を航行していた。郡中沖を通過していた(あるいは郡中の海浜に停泊した)とき、伊予岡の辺りが明るく光るのが見えた。これはきっと神託に違いないと思い、この岡に社殿を建立して、祈願所と定めた。以上が、この神社の起こりらしい。
この手の話を「龍燈伝説」とでも呼んでおこうか。厳密に言うと「龍燈」は、海上に光が連なって見える現象で、龍神が神仏に捧げる灯火と言い伝えられるところからの命名らしく、陸地の光に「龍燈」の名を用いるのは不適切なのかもしれない。しかし、伊予市近郊では、伊予灘を航行中に陸地に何やら光るものが見えたという話が多く伝わる。
・龍燈の松(松前町):松前城二の丸付近にあった松の巨木で、昔、松前港に向う漁船が遭難した時、この松の上に光が昇り、漁船の道案内をしたという。
・宝珠寺(伊予市上吾川):天暦6(952)年8月のこと、九州筑紫(福岡県)の国司・藤原国光が、船で都へ上がる途中、猛烈な風雨で遭難の危機に直面したとき、伊予の山の辺りから一筋の光がさし、雨風がぴたりと止んだ。国光はその光をたどって米湊に上陸し、そして光に導かれるまま谷上山へと昇ったところ、立派な寺があることに驚いた。そして命を救っていただいたことに感謝し、本堂・宝塔・仁王門などを改築した。
・太山寺(松山市太山寺町):用明天皇2(586)年、豊後国(大分県)の真野長者が、浪速(大阪)へ商いのため船団で瀬戸内海を航行中、高浜沖で大嵐に遭った。観世音菩薩に、一同の無事を祈願したところ、経ヶ森山頂から一筋の光明が輝き、嵐が静まり、遭難を逃れることができた。
これらの話で概ね共通するのは、航行中に遭難しそうになったところ、陸地で何かが光り、その光に導かれて難を逃れたという説明である。
灯台もなかった時代、いつも穏やかな瀬戸内海といえども、悪天候時には命懸けの航海であったろうから、海難事故を回避できたことの不思議、そして喜びを伝えるために、沿岸部においてこの手の話がまことしやかに伝えられるようになったのであろうと想像する。
この神社創立にまつわる話がどこまで正しいのかはよくわからない。石清水八幡宮の創立は貞観元年(859)年であり、宇佐から勧請の途中に立ち寄ったという話の辻褄は一応合っている。しかし、最初に述べたように、この吾川は石清水八幡宮護国寺の荘園だったわけで、ひょっとしたら後付けの由来譚かもしれないなと考えたりもする。疑り深いのが私の悪い癖である。
伊予岡八幡神社拝殿
伊予岡八幡神社は、その名の通り「八幡宮」だし、宇佐神宮から石清水八幡宮へと勧請される途中で建てられたなら、当然、宇佐神宮や石清水八幡宮と同じ神様が祀られているだろうと単純に考えていたのだが、宇佐神宮・石清水八幡宮の祭神は、
・八幡大神(やはたのおおかみ):応神天皇(おうじんてんのう)。誉田別命(ほんだわけのみこと)とも。
・比売大神(ひめおおかみ):多岐津姫命(たぎりびめのみこと)・市杵嶋姫命(いちきしまひめのみこと)・多紀理姫命(たぎつひめのみこと)の3女神
・息長帯姫命(おきながたらしひめのみこと):神功皇后(じんぐうこうごう)
の3柱である。(厳密に言えば、比売大神は3女神なので、合わせて5柱が正しいか。)
ところが、伊予岡八幡神社の祭神は、八幡大神、息長帯姫命、足仲彦命(たらしなかつひこのみこと)の3柱となっている。創建の由来譚が正しいならば、宇佐神宮や石清水八幡宮と同じでなければおかしいのではないか。
しかし冷静に考えてみると、足仲彦命は第14代天皇・仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)のことで、神功皇后はその妃である。八幡大神、すなわち応神天皇の父母にあたるわけだから、八幡信仰というものはこの3柱の組み合わせの方がもっともらしいようにも思えてくる。
何はともあれ、各神々の御神徳は以下の通りである。
・八幡大神:国家鎮護、厄除開運、成功勝利、武運長久など。
・息長帯姫命:安産、子授け、子育て、武運長久、開運招福など。
・足仲彦命:家内安全・家運隆昌・交通安全・心願成就など。
参拝し祈願すれば、大抵の願いは叶えていただけそうだ。
大抵の神様はオールマイティに願いを叶えて下さるだろうから、その神社の祭神がどなたであるのかを深く考える必要はないのかもしれない。あれこれと素性を知ろうとするよりも、むしろ、真摯に祈る姿勢の方が大事だろう。
かと言って、やっぱり祈りを捧げる神のことを少しでも理解しておかねば、ちょっと失礼のような気もする。八百万の神々の中には、特定の分野でエキスパートとも言えそうな専門性を発揮する神様もおいでるのだから、せっかく参拝するならば、そこを押さえ、リスペクトした上で祈りを捧げたいものだ。
例えば大学受験合格という御利益を与かりたければ、菅原道真を筆頭とする「学問の神」に祈るのが一般的であろう。しかし、それだけでは少々心細い。競争相手である他の受験生も同様に、同じ神様に合格祈願をしているだろうし。ならば、「受験競争に勝つ」という御利益も与かりたいところだ。この意味で、「成功勝利の神」の御加護もいただける神社、伊予岡八幡神社も、受験合格祈願のためには訪れておきたい神社の一つになるだろう。
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伊予岡八幡神社について、もう少し広く語るつもりだったのだが、余計な文章を書きすぎて規定文字数を大幅に超過しそうになってしまったので、この続きは次回のお楽しみとして、今回はこのへんで筆を置くことにしよう。
◆お店の詳細◆
店名:こたろう博物館
住所:愛媛県伊予市灘町60-3
電話:(非公開、詳しくは店頭で)
営業時間:10:00~19:00
定休日:火・水曜日(その他不定期休がありますので詳しくはホームページ等のカレンダーでご確認ください)
◆「伊予市ガイド vol.147 第19回 神社に詣でる-(3)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/81199
◆「伊予市ガイド vol.144 第18回 神社に詣でる-(2)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/80131
◆「伊予市ガイド vol.141 第17回 神社に詣でる-(1)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/79193
◆「伊予市ガイド vol.138 第16回 石造物を訪ねる」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/78092
◆「伊予市ガイド vol.135 第15回 道を訪ねる-(5)~いにしえの道」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/77204
◆「伊予市ガイド vol.132 第14回 道を訪ねる-(4)~その他の道」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/76376
◆「伊予市ガイド vol.129 第13回 道を訪ねる-(3)~市道とか」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/75466
◆「伊予市ガイド vol.126 第12回 道を訪ねる-(2)~そして県道へ」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/74761
◆「伊予市ガイド vol.123 第11回 道を訪ねる-(1)~まずは国道を」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/73821
◆「伊予市ガイド vol.120 第10回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(4)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/72993
◆「伊予市ガイド vol.117 第9回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(3)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/71897
◆「伊予市ガイド vol.114 第8回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(2)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/71175
◆「伊予市ガイド vol.111 第7回 橋を眺める~何かしらを跨ぐ路(みち)-(1)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/70419
◆「伊予市ガイド vol.108 第6回 地下を潜る路」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/69458
◆「伊予市ガイド vol.105 第5回 川を堰き止めるものを訪ねる」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/68618
◆「伊予市ガイド vol.102 第4回 水を求めて~川を見つめる(2)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/67646
◆「伊予市ガイド vol.99 第3回 水を求めて~川を見つめる(1)」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/66679
◆「伊予市ガイド vol.96 第2回 水を求めて~ため池を眺めてみる」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/65665
◆「伊予市ガイド vol.93 第1回 農村風景を眺める」
https://matsuyama.mypl.net/article/iyo-perfectguide_matsuyama/64697
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※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。
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